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皆さま
日頃、「大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム」(大学フォーラム)の活動にご理解下さり、ありがとうございます。
ご承知のように、政府は 4 月 20 日、日本学術会議法改正案の今国会への提出を断念しました。これは何よりも、4 月 18 日の総会が全員一致で採択した勧告によって、法案提出を「いったん思いとどま」ることを求めた学術会議の毅然とした態度に直面し、学術会議をはじめ国内外の懸念の声に真摯な態度で耳を傾けることなく法改正に突き進もうとする強引なやり方を、いったん見なおすことを余儀なくされたものにほかなりません。
言うまでもなく、これで問題が終わったわけではありません。「国の組織でありながら政府から独立して活動する科学者の組織」の存在を受け入れることのできない政府は、すでに示唆しているように、学術会議の「あり方」の改変を引き続き追求することになるでしょう。しかしそこには、「学術の中心」としての大学をめぐるさまざまな危機や社会の多くの人びとが懸念する「研究力」の低下を前に、政府は、そして社会は、学術に対してどのような態度をとるべきかについての深い省察を看て取ることができません。
日本学術会議はその勧告において、「日本学術会議のあり方を含め、さらに日本の学術体制全般にわたる包括的・抜本的な見直しを行うための開かれた協議の場」を設けることを主張しています。この「協議」とは、政府と日本学術会議との二者間の協議にとどまるものではないでしょう。
大学フォーラムも、1 月 7 日の声明において、次のように述べました。
「いま、真に問われるべきことは、学術会議やそれが担う学術に対して政府がこれまでどのような態度をとってきたのか、ということである。問われるべきことの中には、例えば、科学技術政策の『司令塔』とされ、『国際卓越研究大学』構想に示されるように大きく変貌しつつある近年の大学政策を主導してきた総合科学技術・イノベーション会議の役割やその意思決定のあり方なども含まれる。そのような問いの中で、『学術の中心』としての大学の危機をどのように克服すべきか、大学が担う〈学術〉と〈科学技術〉とはどのような関係にあるべきなのかということを、市民とともに考えてゆかなければならない。」
私たちは、このような観点から、日本の学術のあり方についての幅広い議論に加わるための活動を続けてゆく決意です。
引き続きご協力くださいますよう、改めてお願いいたします。
2023 年 4 月 25 日
⼤学の危機をのりこえ、明⽇を拓くフォーラム 運営委員会